自然に生育している木々は、根本付近の幹と先端部分の幹とで太さに違いがあったり、曲線を描くように生育していたりすることも珍しくありません。
だが、吉野杉は、幹の根本から先端にかけてほぼ一定の太さで真っ直ぐに幹が伸びるという特徴があります。真っ直ぐな材ほど、反り、曲がりといった木が乾燥する過程の現象が起こりにくく、良材としてふさわしい条件を備えています。
吉野杉は一年あたりに成長する年輪幅がほぼ一定で、バランス良く綺麗に年輪が刻まれています。年輪の多いものでは、1cmの中に数十本もの年輪が見られるものもあり、吉野杉の緻密で均一な年輪は、木材として切断した際も板目や柾目の杢に美しく現れます。
また、年輪が細かいがゆえに密度が高く、強度が高いことも吉野杉の特徴です。杉のヤング係数の全国平均値がE70に対して、奈良県産材の平均値はE90と1.3倍の強度があることが奈良県森林技術センターの試験結果で示されています。
吉野杉は淡紅色の美しい色艶があるため、造作材や構造材として利用した時にも存在感があります。色艶は時を経るごとに独特の色味を深めていくので、新築時の美しさはもちろん、住み続けることで経年変化の美しさを楽しむことができます。徐々にアメ色に変化していく過程を感じることができる、見た目にも嬉しい木材です。
そんな吉野杉の良さを活かすためには、乾燥方法がとても重要です。木材の乾燥には「天然乾燥」と「人工乾燥」の2種類の方法があります。人工乾燥は一度に大量生産ができ、色ムラが少ないというメリットがありますが、吉野杉の香りや艶が損なわれやすいデメリットもあります。
一方、天然乾燥は自然の力で少しずつ乾燥させるため手間はかかりますが、木の香りや色艶を最大限に引き出すことができます。高橋商店では、人工乾燥で失われやすい吉野杉の色味や艶を保つためにあえて時間と手間のかかる天然乾燥を主としています。